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GAte Keepers



 丸い目の部分だけが妙にめだった原始的な姿で彼はそこにいた。
 虚空に浮かぶ球の中であわただしく細胞分裂を繰り返し形成し続けていた。
 彼が存在することのできる唯一の場所は、彼らの創造主の大きさと形状によくにており、それに包まれている彼は、掌に載せて指を閉じれば握りつぶされそうなくらいに小さい存在だった。


 …何をしにきた。
「お言葉ですね。あなたが肉体を失ったときいたのでお見舞いにきただけなのに」
 答えはなかった。
 代わりに球体がひときわ強く赤く輝き、目がくらむ。
 中にいる彼を護るというよりも、彼自身が拒絶したかのようだった。
 だが、手を伸ばすとあっけなく触れることを許した。
 排除しようとする力が手の先から腕の付け根までしびれさせた。 だが、一瞬だけ。
 それほどまでに無力な彼。
「かわいそうに。こんなに傷ついて」
 それは同情ではなく、哀れみでもなく…。
 侮蔑。
「赤の秘石があなたを外に出して私の一族に近づけただけでも驚きだったのに」
 決まった体を持たぬ自分。
 体は持つが楽園に縛られている彼。
 それまで自分たちは互いの存在は知ってはいても、決して見えることのできない存在だった。
「あなたは何を求めたのですか、私の一族に」
 
 
 自らの存在意義を忘れた結果がこれだ。
 番人であることを忘れたことの報いは肉体の消失だけではない。
 それでも全てをが忘れてまで求めたのはただ一つだった。

 それは彼の創造主にさえ理解できなかったのだから。
 だから、彼に分かるはずはない…。


 答えも得られず。この姿では表情も伺うこともできない。
 それは最初から期待してなかったらしく、アスは口の端をゆがめて苦笑した。
「そうですね。理解する必要のないことですから。
 そうそう。あなたに差し上げるものがあったのですよ」

 戦場で彼が捨てたものです、と「それ」を差し出した瞬間…。
 赤い球体がひときわ輝き、アスの両手はすごい勢いではじき出された。
 
 血まみれになった己の両掌を見つめ、アスは笑う。
「お気に召しませんでしたか」
 球体は排除に力を使い切ったのか、何の反応も示さなかった。
 あの強い光も徐々に弱まり…そして最後には赤い冷たい輝きを持つただの玉になった。

「おやすみなさい、ジャン…」
 

 青の悪夢など見たくはないでしょう?
 
 だから、せめて夢のない世界で…。
 







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