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Happy Halloween?




「Trick or Treat!」
 真夜中。
 お世辞にも控えめとはいえないドアのノックに続いて、ドアが派手な音を立ててあけられたのに驚いてリキッドは布団から飛び起き、側で眠っていたコタローとパプワ、チャッピーも目を覚ます。
「な…何事だー!」
 いきなりの闖入者。
 ナマモノでなくご立派なホモサピエンスのご一行様…とくるとやってくるのは大体見当がつく。
 またこの人たちはろくでもないことたくらんで、と直感で理解したリキッドが身構えたところ、元上司の口から出てきたのは…。
「オラオラ、イタズラされたくなかったら酒を出せ」
「酒かよ!」


 今日はハロウィン。
 仮装した子供たちが家を「Trick or Treat?」といってお菓子をもらっていく日…のハズだが、目の前にいる四人はどう考えてもそんな行事は30年前に卒業してるだろうって連中ばかり。仮装なんかしてないし、おまけにすっかりと出来上がっている。
「いい年した大人がなんですかっ!夜中なんですから。それに子供もいるし…」
「おまえがちみっこどもをよこさなかったからオレらが来てやったんだぜぇ、リッちゃん」
「えー家政夫じゃなくて、ボクらに何か用事があったの?」
 ようやく頭が回り始めたロタローがハーレムに無邪気に尋ねる。
「おう、今日はハロウィンだ。家にやってきたちみっこにな…」
「泣く子はいねぇかぁ〜?ってこのオッサンが包丁もって聞いてあるく日…ぐはっ」
 イタリアンの自爆はともかくとして、あんたらのところにうちのちみっこどもを行かせるなんてできません、とリキッドが言おうとした時だった。
 ハーレムがおもむろに袋を取り出して、中をさぐり始めた。
 何だろ、と見ていたロタローの目が、取り出された手の太い指の隙間からのぞいているものに気づき輝き始める。
「手ぇ出しな」
 差し出された小さな掌に、大きな掌から色とりどりのキャンディーが降ってきた。
「ホレ、おまえも」
 そして、パプワとチャッピーにも。
「おじさん、ありがとう!」
 礼を言われたハーレムは、少し照れくさそうな笑いを浮かべたが、すぐに視線が明後日の方向を向いた。大人四人の視線が自分に注がれていたのに気づいたらしい。
 ひょっとして…隊長はロタローがやってくるのを待っていたのかな?と…リキッドは少し申し訳ない気がした。
 …が……
「…ということで、コイツは貰っていくわ」
 いきなりハーレムの肩に乗せられ、視点が回転する。
 行く先は考えなくても分かる。どうせ酒盛りのツマミを作らせるつもりなんだろう。誰かが台所を物色している気配がしてるし。
「離せぇ〜!獅子舞〜!」
「うるさいなぁ〜家政夫。早くいっといでよ」
「うむ。がんばれよ」
 どうやら獅子舞のおかげで、ちみっこたちは、ハローウィンとは『大人が夜中にやってきてお菓子を置いていく日』だと思い込んでしまったらしい。
「オレの貴重な睡眠時間を返せぇ〜!」
 ちみっこ二人は空しい叫びを上げるリキッドをPAPUWAHOUSEの前で手を振って送り出し、あくびをしながら戻った寝床で手にしたキャンディをお供に、夢の世界へと帰っていった。








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